Product Manager に求められるスキルについて(Creative力、信念、哲学編)

なんと・・・気がついたら前回の更新からあっという間に1年近く経っていた。。。 もともと筆まめではないにしても、ちょっと期間があきすぎたと猛省。。。orz...

 

気を取り直して、今回は以前からの続きの Product Manager に求められるスキルについて、で Product Manager に必要だと思う creative力、信念、哲学に関して自分の思うことを少し。

 

Product Managerをやっていると、製品を世に送り出すまでに様々な問題、困難に直面することになる。例えば、技術的な制約(サイズ、コスト、パフォーマンス etc...)、人的な制約(人材の変動、組織変更 etc...)、資金的な制約、外部要因(マーケットの変化、競合の追従 etc...)などなど考えだしたら枚挙に遑がない。

 

問題は、それら状況に直面したときに、どのように乗り越え、そして乗り越えるだけではなく製品としてプラスへと転換させるかだと思う。

得てして困難な状況は次へのチャンスの場合が多く、製品レベルの話をすると、次のイノベーションやムーブメントを作る為の試金石だったりする。

 

大切なのことは、そのような状況に陥った時に、その都度状況を客観的且つ立体的に把握すること。そして、1つのやり方が完全にダメになったからといって諦めない。ここで、Product ManagerとしてのCreative力が問われることになる。

例えば、今までのマーケットの踏襲したやり方や機能など、常識を一度疑ってみて、もしかしたら実はNice to haveだけどMustではなく、その部分を除外することで制限がなくなったり、一度基本に立ち返り問題の本質を見つめ直してアプローチの仕方を抜本的に変えてみる、マーケティングのメッセージ性を変えることで、制限が生まれても制限が制限でなくなるようにする、など様々な手法が考えられるし、それら手法やアイデアの連立方程式が、Product ManagerとしてのCreative力が真に問われる部分だと思う。

 

そしてさらに大切なことは、それらを考えるだけではなく、決断をし実行に移す上での Product Manager としての信念 (覚悟) と、その信念を支える為の自分なりの哲学を持つことだと思う。

 

先にも述べたように最初に想定していたことと、実際に開発を進めて世に生み出して行く過程で、製品として大きな変更を余儀なくされることは往々にしてある。何かを得る為に、何かを切り捨てなくてはならないかもしれない。

そうなった時に、主要顧客や外部の意見・求めているものと真っ向から対峙してしまうかも知れない。

でもたとえ対峙したとしても、対峙を恐れず、製品として正しいと信じた本質を見失わずに、きちんと達成したかったもっとも重要なことを製品で体現するためには、Product Managerが己の信念をぶらさずに、そしてそれを支えるための哲学を持つことが一番重要だと思う。(もちろん決断をするまでにチームで議論は重ねるけれども、最終的にはProduct Managerが全責任を持って決断をし前へ進めて行くため。)

 

これが出来ない Product Manager の製品は、どこか背骨の無い、よくも悪くも当たり障りの無いありきたりなもの、本質を見失った製品になってしまう危険性がある。

 

逆説的にその信念や哲学を体現する為にProduct Managerをやっていて、製品を通して自己表現をしているのだと思うし、それが醍醐味の1つなんだなー、とこの記事を書いていて改めて思いつつ、気を引き締め直す次第です、はい ^^; 

 

自戒の意を込めて。

 

Product Manager に求められるスキルについて(Communication編)

基本は前回の記事と同様で、当たり前のことの羅列になってしまうかもですが、今回はCommunication力を構成する以下の4点について、少し私感を。

  • 語学力
  • 会話力
  • プレゼン力
  • 交渉力

大切なことは、このCommunication力によって、良い製品がきちんと世に伝わるか、はたまた何となくで終わるか、どれだけマーケットや人を熱くできるか、がかかってくるので、前々回の技術力と、前回のマーケティング/Business Dev力をすべて出し切り、正当に世に問う為に絶対必要。

ただ残念なことに、結構なひとがこの力をUnderestimateしている気がする。

 

 

1)語学力について

自分の製品や思想を世界に対して売りたいのであれば、ネイティブクラスの英語力は必要不可欠。誤解してほしくないのは、ここでいうネイティブクラスの英語というのは、発音という意味だけではなく、言い回しだったり、語彙力だったりと、言語全体のバランスのことを指している。同じ英語でも国によってやはり訛りはあるし、そこはある程度のレベルであれば許容される(ひどい訛りは別)。でもいわゆるカタコトもしくは日常会話レベルな英語ではビジネスには使えない。

FYI, 以前の記事で少し触れてみたので、ご参考までに。
文系でシリコンバレーのアメリカの企業で働くということ - シリコンバレーで働く文系のBlog

 

特にCEOやProduct Managerなどスポークスマン的なことを生業とする場合、この語学力は本当に重要。よく見かける惜しい例は、CEOやその製品を担当しているProduct Managerやマーケの人間の英語力が低く、何をそもそも伝えようとしているのか分からない、もしくは聞く側が努力して理解しようとしないと、理解できない場面に遭遇する。。。

すなわち製品の良さや優位性を訴求しても、それが相手の頭にすんなり入ってこない状況で、自分の製品なりサービスを売り込みたいときに、これはもの凄く大きな足枷になる。

不得手なりに伝えようとする気持ちは大切だけど、それを対外的に(本番で)やるぐらいなら、しゃべれる人間を雇って、その人に伝えてもらった方がいいと思う。

この点に関しては、Y CombinatorのPaul Grahamも似たようなことを言っているし、自分も全く同意。

Y Combinator's Paul Graham defends foreign accent comments | Cutting Edge - CNET News

語学力が理由で本来もっと認知されるべき製品が、認知されないのはもったいなさすぎる。。。

 

2)会話力

2つ重要なことは、人と話すのが得意でなくても、会話力の高い人は沢山いるので、大切なことは、自分のスタンスとスタイルを1つの言語で確立しておくこと。そうするとある程度はどの言語でも応用が利く。あとはその国の文化や宗教、風習等にあわせて調整する。

もう1つはゴールを明確にして論理的に会話を組み立てて、相手に分かりやすく伝える技術。だらだらと要点が不明瞭なまま話し続けるのは駄目。

 

3)プレゼン力

これは、本当にどれだけ場数を踏んでいかに練習するかにかかってると思う。資料の作り方、話し方、立ち方、視線の動かし方、間の取り方、質疑応答のやり方、すべて重要。今の仕事的に、大小・社内外併せると年間そこそこの本数プレゼンしていると思うけど、ほぼ毎回、どんなに今まで何回もプレゼンしたことがある資料とTopicだとしても、リハーサルは行う。というのは、参加者のレベルや役職、出身国などによって、同じスライドでも伝え方を変えるため。これをしないとせっかくプレゼンをしても、情報伝達が効率的に行われない。

自分にとってすごく幸運だったことは、こちらに来てから、シリコンバレーでは伝説的なプレゼンテーションの講師である、Jerry Wismanのクラスをとることが出来て、そこで色々と直接教えてもらえたのは大きかった。

One on One: Jerry Weissman, Silicon Valley’s Storyteller

これが礎となって、今自分なりのスタイルが少しずつ出来てきた気がします。(ぜんぜんまだまだひよっこですが。。。^^;)

 

4)交渉力

これは今までに触れた1)〜3)の総合力がベースになる。

それに加えて個人的に一番大切にしていることは、様々な国の宗教や哲学や文化をより多く理解しておくこと。特に色々な国の人と交渉を行う場合、これは最も重要な点になる。

 

なぜあの人はあの時、ああいう拒絶反応を示したのか?

 

この相手にとって何が重要で何が重要でないのか?

 

などを理解するときには相手の内在的論理を知る必要があって、宗教や哲学や文化をより多く理解出来ていると立体的に状況を捉えやすくなる。またもし万が一想定外の事態に発展してもある程度は冷静でいられて、次への対応が組み立てやすくなる。

この辺に関しては、佐藤優さんの著書が非常に参考になるので、ぜひ読んでみてください。

 

 

 次回はProduct Manager に求められる Creative力、信念、哲学について少し触れたいと思います。

 

To be continued...

Product Manager に求められるスキルについて(マーケティング/Business Dev編)

前回はProduct Managerに求められる技術力について少し書いたので、今回はマーケティング/Business Development力について少し。

 

マーケティング/Business Development力と一口に言っても様々なことを包括してしまうけど、その中でもProduct Managerにとって重要なのは以下の点になると思う。

  1. マーケット分析、End User分析
  2. マクロ、リージョン、国ごとの景気見通しと今後の対策
  3. 競合分析
  4. 中長期的ビジョン(ロードマップ)の作成
  5. 他社とのパートナーシップ交渉 / 構築
  6. Inbound / Outbound (GTM 含む)マーケティング
  7. 世界の様々な案件のサポート
  8. Forecastと売り上げ、またそれに付随する数字の管理
    などなど

こうして眺めてみると、まあ当たり前の事柄が並んでいるので、それぞれに対してコメントをするのはここでは避けるが、大切なのはやはり様々な事象やプロジェクトが同時進行していくなかで、短期的、また中長期的な視点から、正しいPriority付けをして、取捨選択できるバランス感覚なのだと思う。

 

例えば今自分のチームでManageしているOngoing の製品開発プロジェクトだけでも30以上にのぼり、これに加えて個別のInbound また Outboundのマーケティング活動、GTM (Go To Market)戦略、個別案件の対応などなど枚挙にいとまが無い。

 

それでもまだ想定通りに物事が運んでくれればいいのだけど、まあ往々にして、変化は外部からもたらされ(景気動向変化だったり、組織変更だったり、人の出入りだったり、マーケットの変化だったり)、予期せぬ事態になることが多い。
そのとき大切なのは、上記のスキルを複合的に組み合わせて状況を客観的且つ立体的に把握すること。そしてそれに基づいて、その時の状況にマッチした正しいPriority付けを行い、取捨選択をし、物事を前へ進めることだと思う。

(その時の状況にマッチした正しいPriorityというのが大切で、たまに見受けられるパターンとして、当初のPriorityにこだわり過ぎてしまい、柔軟性を失って間違えたPriorityのまま進めてしまい、ちぐはぐな製品が出来上がってしまうことがある。)

 

そしてこの決断をするときに、いちいち稟議や上司の指示を仰ぐようなことをしていては決断が遅れるし、それでは製品開発に大きな支障をきたすため、通常Product Managerにはそれなりの権限と責任が与えられて、自分の判断でどんどん前へ進めていけるし、逆にそれが出来ないと話にならない。(もちろん決断をする前に、チーム内でいろいろと議論は重ねます。)

 

だから良いProduct Managerは、自分の製品を語るときに、Co-Founderのような感覚で、熱く語れるのだと思う。

 

次回はProduct Managerに求められるコミュニケーション力について触れたいと思います。

To be continued...

Product Manager に求められるスキルについて(技術力編)

今まで何回か、Product Manager について触れた中で、
「具体的にどういうスキルを身につけたらいいか?」
という質問を頂いたので、今回はその話を。

(過去のProduct Managerに関する投稿は以下に)

 

Product Managerという職種は様々な業界に存在しているけど、本質的に求められるスキルはどこも大枠同じだと思う。それを裏付けるように、他業界で同じようにProduct Managerを生業としている友人たちと人材採用等の話をすると、持っていてほしいコアなスキルとして大体以下の共通項にまとめられる。

 

  • 技術力(Solution/Use Caseならびに個別の製品/機能を俯瞰的に見渡せる力、機能を実装させるのに必要な要素技術ならびに付随するリスクに対する理解力)
  • マーケティング / Business Development能力(マーケット分析力→ビジネス&技術的なトレンド→ロードマップ策定、競合分析、問題解決力、数字に対するセンス etc...)
  • Communication能力(プレゼン、交渉能力、語学力)
  • Creative能力(想像力、応用力)
  • 信念、哲学

 

この中でどれか1つが欠けても、偏ったバランスの悪いPMになってしまう。もちろん、すべてをパーフェクトにする必要はないけど、これらはすべてかけ算なので、どれか1つが0だと、0になってしまう。これから何回かに分けて、それぞれについて、もう少し突っ込んで書いてみようとおもう。(分けないと、長くなりすぎてしまうのでw)

 

今回は1つ目の技術力について。

 

これは言わずもがな、な感じだけど、この本質を理解できていないProduct Manager が意外と多い気がする。

結論から少し述べてしまうと、細かなところまで完全に理解する必要は無いけど、少なくとも何か製品を作るにあたって、そもそもなんでそれが必要なのか?どのように使われるのか?それを実装するのに必要な要素技術とかかるコスト、ならびにリスクについては感覚的にすぐ把握出来る必要がある。

具体的には以下の2つに大分できる。

 

1)実際のUse Caseと問題解決方法を製品/機能レベルで理解する

例えばそもそもお客さんのどの問題を解決しようとしていて、その製品/機能があるとどのように解決できるのか?なぜ現存する製品や機能では解決できないのか?出来たとしても、新しく作らなくてはならない理由は何か?それが使われる際に、どのように使われるか?またどのようなパラメーターで使用されるケースが多いのか?そのパラメーターで無いといけない理由は?他にどの機能と一緒に使用されるのか?その他の機能とのinteroperabilityは?などなど具体的なUse Caseをもとに、求められる製品/機能の全体像と詳細を把握できているかが大切になる。

で、実際にものを作るエンジニアはこの部分のinputを強く欲する。逆をいえばこれがきちんとエンジニアに説明できれば、優秀なエンジニアであれば、いくつかのオプションとそれぞれのPros&Consを提案してくれて、数回のMeetingでほぼすべて必要なことを決め、Timelineにまで落とし込める状態になる。

そういうMeetingが出来たときに、個人的には最高にアドレナリンが出て燃えるw 

逆にここがぐだぐだだと、何度Meetingを重ねても前に進まなくなり、どんどんやる気が削げていく^^;

 

2)製品/機能をコストやリスクも含めた実装レベルまで落としこんで理解する

例えば自分の場合だと、ある製品/機能を実現させる場合、それはソフトだけで実現可能なのか、それともハードに依存しないとパフォーマンス的に成立しないのか?もしハードで実装させる場合は、現行のどのASICで対応できるのか?自前ASICを使うべきか、汎用ASICを使うべきか?もし対応できない場合は、FPGAで実装可能か?そのときのFPGAの論理的サイズとコストならびにPCB上にFPGAを許容できるスペースがあるか?そのとき装置として見たときの熱量や消費電力は、求められるスペックの許容範囲内に収まりそうか?テストケースはどのようなものが考えられるか?全体として実装にかかるエンジニアリソースならびにスケジュールはどのぐらいになりそうか?などなどを感覚的にすぐに割り出せるかが重要になってくる。

この理解がある程度できないと、エンジニアと会話するときについていけなくなるし、   Product Managerとして大切なInput が出来ずに、結果的に出来上がってくるものは100% Engineering Drivenなものになってしまい、割と独りよがりな商品に仕上がってしまうケースが多い。

 

と、ここまで書くと、もしかしたらエンジニア上がりのProduct Managerは得なのかもしれない。と思われがちなのだけど、実際は必ずしもそうではない気がする。それは、割とエンジニアは特定の機能を実装させることにFocusして開発しているケースが多く、実際のUse Caseやマーケットのニーズをあまり理解できていない、すなわち全体像を俯瞰して把握できていないケースが多い。これでは残念ながらProduct Managerに求められる技術力があるとは言えない。

 

Product Managerに求められる技術力とは、全体を技術的に俯瞰できる能力と同時に、製品/機能をコストやリスクも含めた実装レベルまで感覚的に把握できることだと思う。

 

次回は以上の求められる技術力を踏まえた上で、Businessサイドで求められるスキルについて少し書きます。 
To be continued... :)

続:アメリカで働く為のパス

以前、“アメリカで働く為のパス”というのを書いたのですが、今回はそのもう少し補足的な話を。

 

「仕事を変える場合、以下の3つのうち、2つまでは同時に変えてもなんとかなるけど、3つ全部を一気に変えるのはかなりリスクが高くなる」、という転職するときによく聞く話は、そのままアメリカへ来るときにも当てはまる。

その3つとは;

  • 会社
  • 職種
  • 場所

 

自分の場合は、会社は一応同じ会社(かなりカルチャーは異なるけど)で、職種は違うものの、実際に日本で行っていた仕事は、アメリカで最初に就いたJob Descriptionにかなり近いもので、広義にはあまりギャップがなかった。唯一大きく変わったのは場所、ということになる。

これでもし会社も職種も全く違っていたら、結構しんどかっただろうな〜と思う。

 

やはりどんなにアメリカと日本のオフィスでカルチャーや仕事の仕方が違うとはいえ、社内で使っているToolや、情報の取得の仕方、KeyになるContact Personなどのベースは変わらないので、その辺の基礎的なことを1から学ぶために余計な時間を割く必要がなかったため、本来の新しい仕事に最初から没頭できた。

もし会社も変わって、職種も変わって、場所も変わっていると、インフラが全部違う、新しい職種内容を把握するにも時間がかかる、そして不慣れな場所で生活するため、余計なストレスがかかる、となり、結構な負荷になると思う。

 

特にアメリカへ来て最初の3ヶ月は、SSNの申請、免許証の取得、車の取得、住居・車等の保険への加入、光熱費等の口座開設、銀行口座の開設、クレジットカードの取得、アパート探し、などなどかなりの労力が必要になる上に、最初の1〜2ヶ月、SSNを取得するまでは給料が入ってこないため、日本から持ってきたお金でなんとか食いつなぐ必要がある。(今となっては懐かしい思い出ですが。。。苦笑)

で、アメリカにおいて、SSNを持っていない人は人として信頼されないため、すべての手続き等はオンラインでは出来ず、実際に窓口に行って行わないといけないので、余計に手間と時間がかかる^^;

 

もちろんその3ヶ月が過ぎる頃には、場所にも慣れて、様々な手続きもほぼ完了し、免許証もとれて、生活のセットアップは一段落すると思うけど、アメリカの会社では3ヶ月の試用期間があるため、もしその3ヶ月万が一パフォーマンスを出し切れずに不本意な結果に終わると、ちょっと悲惨なことにもなりかねない。(まあ、そんなことはほぼ無いと思うけど、可能性としての話です。はい。)

 

なので、アメリカに来る場合「場所」は必然的に変わるので、職種もしくは会社は少なくとも同じであったほうがスムーズにこれると思うし、そもそものチャンス自体も多くなると思う。

 

*もちろんすべてを一気に変えてでもチャレンジする価値のある機会であれば、それはぜひトライした方がいいと思うので、これはあくまでも考える上での参考程度にとどめておいてください^^

シリコンバレーの会社でのキャリアパス

結論から言うと、アメリカの組織で明確なキャリアパス、というのはあるようでいて無い。自分でやりたいことを積極的に追い求めていく過程で、結果論的にポジションが上がっていく、というのが一般的である。

 

前回の話でも少し触れたが、そもそもシリコンバレーの組織では転職が当たり前で終身雇用の概念が無いので、島耕作的発想が一切無いし、受け身でいる人に対して会社もそこまで面倒は見てくれない。
 

もちろん、どの会社もある程度体系だったJob Gradeや役職というのはあるし、成果を上げていけばある程度Gradeは上がっていくけど、長くいれば勝手に上がっていくようなことは決して無い。

むしろ、長くいるのに同じところに留まっている(ポジションと言う意味だけではなく、仕事内容的に同じことの繰り返ししかしない)ことの方が問題になる。
この慣習をアメリカでは一般的に"up or out"と言う。

 

そもそも何年働いているか、何歳か、なんてそんなものは知らないし、関係ない。 唯一無二の絶対的な基準は、どれだけ成果を出せているか?の1点に尽きる。だから若くても実力があれば上がっていく。

 

自分も今までマネージャーをやっていて、おそらくほぼ全員自分よりも年上の人をマネージしている。(ほぼ、というのは、アメリカの履歴書には、年齢、性別、エスニック、など一切履歴書には書かないから、そもそも知らないし、そんな質問を面接等でしたら訴えられる :) )そして、自分よりもGradeの高い人もマネージするケースは多々ある。

 

これは以前も書いたけど、マネージャーだから偉い、というわけでは決して無い。マネージャーは単に職種の1つでしかない。

マネージャーの役目は、ビジネスゴールを設定し、それを達成するためにチームをリードしてその結果に責任を持つことと、チームが働きやすく最大限のパフォーマンスを発揮してもらうために粉骨砕身働くこと、この2つに尽きる。だからチームに仕事を振る以上に自分も仕事をしなくてはならない。アメリカで単なるdispatcherは忌み嫌われる。

 

では具体的にどのようなキャリアパスの可能性があるのか、開発エンジニアをベースに以下に少し書いてみる。(もちろんこれが全てではないけど、主要なパスはカバーされていると思う。)

 

例 : 開発エンジニアの場合(左→右)

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* ここがアメリカの組織で好きなところだけど、エンジニアとして極めていけるパスがきちんと用意されている。だからマネージャーだけが上に上がるパスではない。

 

上記を見たら分かるように、ひとくくりにEngineerのキャリアパスと言っても様々な可能性がある。そしてその道を決めるのは自分でしかない。ただ自ら動いて出した結論に対しては、会社やチームはきちんとサポートしてくれる。ここがシリコンバレーのいいところだと思う。

だからもし今やっている仕事では自分の描いているキャリアが実現できないのであれば、自ら動いてポジションを変わるなり、転職をするなりしたほうがいい。(異動の話は前回の"受け身な異動なんて無い"を見てみてください。)

 

やはりこの街では受け身からは何も生まれない。

受け身な異動なんて無い

この前、アメリカの会社で職種って変わったり、部署異動ってあったりするんですか?という節の質問を頂いたので、今回はこの話題で :)

 

結論からいうと、アメリカの会社で受け身な異動はほぼ無い。 

 

そもそもアメリカで就職する際には、大学でどのMajor(学部)を卒業したか、非常に重要になってくる。日本の新卒のように(自分ももちろんこれに当てはまる)、学部は文系でもEngineerとして雇われるようなことは、こちらではかなり稀である。もし仮に自分が新卒でアメリカの本社に最初から就職をしようとしたら、営業になっていたと思う。

 

アメリカの大学は、本当に密接に社会と連携している。インターンの豊富さと、その重要性を見ても明らかである。

 

これは終身雇用なんて概念がそもそもアメリカには存在しないので、企業としては雇って即戦力にならないんだったら雇わない。そしてそれは新卒にも当てはまる。(もちろん、新卒は中途と比べて、多少の時間的猶予はもらえるが、それでも、日本の企業と比べると圧倒的に成果を1年目から求められる。)

 

例えばCSを卒業したら、働く口として多いのはsoftware engineerであったり、EEの場合は、hardware engineerだったりするケースがほとんどである。もちろん、software engineerでも様々な言語や、アプリケーションの特性があるので、次に重要になってくるのは、自分が大学で主に扱ってきたテーマや言語を中心に就職先を考えていくことになる。

 

なのでSoftware engineerで雇われて、途中から会社都合(例えば部署がなくなるとか)で、Hardware engineerをやれ、というようなことは言われない。

その場合は、普通にレイオフされて、会社は新たにHardware engineerを雇用する。

 

 

もし部署異動や職種を変えたい場合は、自ら手を挙げて社内で就職活動をして移っていくしか無い。

でも、会社はそういう風に自分から動こう、とする人間を出来るだけback upしてくれる

 

 

以前 "アメリカで働くためのパス" の回で少し書いたが、Sofware engineerで開発をずっとやっていたけど、ビジネス寄りのことがしたいからPart time MBAに通って、MBAをとってマーケティングに移ってくる、というのはその典型である。

 

部署異動や、職種の変更がいいのかどうかは本人次第だけど、する場合もしない場合も自分でキャリアプランを立てて、積極的に実行していかないと、結果何も得られず終わってしまう。

 

アメリカの会社はそこまで面倒を見てくれない。