レイオフについて考える

およそ1週間ほど前に、会社でレイオフがあった。今回は500人規模で、全体から見たら1%未満ぐらい。リーマン・ショックのときはもう少し大きくて、確か3000人規模、すなわち約5%ぐらい。それ以外にも定期的にレイオフはある。

 

少し余談になるが、アメリカに来ておよそ8年、大きなレイオフの波は幾度か経験してきたけど、毎回感心するのは、あまり情報が漏れないということ。なので、結構会社に行った当日に、実は今日レイオフがあったらしい、という話を聞くことになる。

  

 

日本の報道を見てると、レイオフが否定的に捉えられ過ぎているきらいがある。確かに日本の雇用保護の守りの堅さは尋常ではないから、そもそもレイオフなんて考えられない、という感覚なのだろうと推察する。

もちろん、レイオフなんてないに越したことはないのだけど、全くしてはダメ、というのもどうかと思う。

確かに高度成長期の右肩上がりだったらまあ支障はないだろうけど、世界を舞台にした弱肉強食の自由競争市場で、且つ内需だけでは立ち行かなくなっていく現実では、その甘さは営利団体を運営しているのであれば少々疑問に思うところである。

シリコンバレーの会社の強みはscrap & buildを恐れずにどんどんやっていける体質にある。逆にこれが出来ないシリコンバレーの会社はどんどん淘汰されている。

 

レイオフに関してよく勘違いされているけど、個人のパフォーマンスベースで個人をピンポイントに切るのは、非常にコストがかかるので、個人に対するレイオフは極力行われない。なので、レイオフされた = 使えない人材、とは必ずしも言えない。

 

大半のケースでは不採算事業部などの縮小及び解散、という形で部署ごと大幅に削減、もしくは無くしてしまう手法を取る。こうすることで、一人当たりのレイオフコストはぐっと下がる。ということは、優秀な人でも、レイオフされる可能性は十分ある。(縮小の場合はその部署の下位数十%が対象となったりするが、あくまでもその部署内での相対評価の下位数十%なので、優秀な人材の集まりだと、実は会社レベルでみると優秀なリソースも切られてしまう時がある。)

ということは、扱うプロダクトによって状況が変わってくるため、先程述べたように、レイオフされた = 使えない人材、とはいきなりはならないのである。

なので他の企業(特に競合)は、そういった人材が流出した時にその人材を雇用しようと動くので、結果的に社会として大きなダメージにはならず、インパクトは吸収されていく。

 

ただし、リーマンショックのときは悲惨だった・・・。

 

あの時は、もうマーケットとして全体が軒並みダメだったので、どこの企業もHiringしていなかった。ということは、失業すると、次の受け皿がないため、路頭にまようことになり、アメリカのような住宅市場に依存するようなマーケットが多数存在する場合(i.e. Home Equity Loanなどのように、住宅を資産としてレバレッジをかけてさらなるローン、または投資をすること)、失業者が溢れ職が見つからずローンが払えない状態になると、すぐに住宅は差し押さえられ、またそれが多発すると市場での住宅価格が下がり、住宅価格が下がるということは、資産価値が目減りするため、レバレッジをかけている元本部分の保証ができなくなり破綻、それら他のマーケットにも多大なる影響をおよぼす、という負の連鎖が起きた。

 

そして、あの時はサブプライムローンの影響が甚大だったため、いわゆる今まで住宅価格を保っていた中・低所得者層の破綻が加速し、住宅価格の下落がきつく、また新規にジャンボローンが組めなくなったため、住宅を新規に購入できる層がかなり限られ、結果需給のバランスが崩れ、マーケットが長期に渡って崩壊したのである。

 

最近ようやくFRBのじゃぶじゃぶの金融政策によって、なんとか一命は取り留めた感はあるけど、これで本当に元に戻ったのか?という点に関しては疑問が残る。個人的には昨年末のQE3でなんとか景気を保てている感が満載な気がする・・・。考え過ぎかな。。。

 

そもそもアメリカでは、住宅価格は長期的に見たらかならず右肩上がりになる、という神話を信じている人が大半なので、上記のようなリスクだらけのローン構造がいとも簡単に成立してしまうのである。(日本人はバブル崩壊からの失われた20年で、その神話は絶対ではない、ということを身をもってわかっているので、この部分に関しては、おかしなことにはならないと思うけど。)

 

話が大きく逸れてしまった・・・w

 

 

何が言いたかったかというと、雇用を守ることは企業として絶対必要なのだけど、利益をあげられないリソースを無理においておく必要もないわけで、結局資本主義の根本に立ち返るような社会では、この新陳代謝は残念ながら自然な姿なのだと思う。

 

なので、今回のレイオフに関しても、メディアは否定的な表現をしたがるけど、まあそういう側面だけではなくて、もっと大きな視点で且つ多面的に解釈をしないとだめだよね、っていうことが言いたかった。

 

あとは、会社に依存しすぎて、その会社でしか通用しないスキルを磨いて、気がついたら実は自分の市場価値がなく、もう貰い手がない、というような仕事の仕方はしないほうがいい。

常に自分の市場価値とマーケットを把握した上で、自分の設定したゴールに向かって市場価値を最大限伸ばしていける手段を選べばいい。そうしておけば、どんな状況になっても、そこそこ食っていけると思う。

 

だから大きな企業で働くのも、スタートアップで働くのも、どの国で働くのも、結局は手段の違いでしかなくて、最終的に自分が実現したいことが実現出来る手段を選ぶことが重要で、手段が目的に取って代わるとおかしなことになる。